タイ式キックボクシング「ムエタイ」の人気が、タイの若い女性の間で高まっている。ムエタイは賭けの対象になるなど荒々しいイメージが強かったが、経済発展とともに健康志向が高まり、ダイエット目的でムエタイジムに通う女性が増えてきた。
首都バンコクの幹線道路沿いにあるムエタイジム。平日の夕方、古びた蒸し暑い建物で、男性に交じり5人ほどの女性が練習していた。軽快なリズムの音楽に合わせ、パンチやキックをコーチのミットに繰り出す。
「フィットネスジムが退屈だったからムエタイに変えた。ダイエットに最適」。カフェ経営者のピラシニー・ピチャイクンウォラシリさんが大粒の汗を流しながらほほ笑んだ。週3回通い続けて1年。友人の間にも口コミで広がっているという。「筋骨隆々の男性のスポーツというイメージはもう古い」
ムエタイはタイの国技で、リング上で多彩なパンチやキックを駆使する格闘技。選手の大半は貧困層が多い東北部出身とされ、タイでは長年「貧しい人のスポーツ」とみなされてきた。
しかし、経済が成長し生活にゆとりができるにつれ、健康に関心を持つ女性が増加。「人気女優やモデルがソーシャルメディアに体験談を投稿し、数年前から人気が出た」(地元記者)という。
富裕層や中間層の女性が仕事帰りや休日、ムエタイジムに通うように。チェーン展開するフィットネスジムもムエタイのクラスを設けている。
ピラシニーさんが通うジムの男性オーナーで元プロ選手のジャロントン・キエットバーンションさんによると、2004年のジム開設時に女性はいなかったが、今は1日約50人の受講生の約8割が20~30代の女性。「ここまで人気が出るなんて、予想できなかった」と驚いている。(バンコク 共同)