WHO(世界保健機構)の調査によると、フランスの平均寿命は世界ランキングでも常に上位。
特に女性はトップの日本と1歳差と僅差です。
長寿の秘訣は、気候や医療環境なども要因のひとつですが、何と言っても食生活が非常に重要なポイント。
日本の食事は世界でもダントツで脂質が低く、非常にバランスの取れた理想的な長寿食だと言われています。
一方、フランスの食事はというと、バターやチーズに生クリーム、お肉などボリューミーで乳脂肪・動物性脂肪たっぷり、しかもワインやシードルなどのお酒を昼間から飲むという、一見健康的とは思えないまったく逆の食習慣。
でも、これぞ『フレンチパラドックス』なのです。
直訳すると「フランスの逆説」と呼ばれるこの現象は、フランスは美食を愛する食習慣であるにもかかわらず健康長寿なのは逆説的である、ということを語っているのです。
フレンチパラドックスを科学的に分析したのが、1992年、フランスのボルドー大学の科学者セルジュ・レヌー。
彼は、「フランスは他の国の人々よりもチーズやバターといった乳脂肪、肉類、フォアグラなどの動物性脂肪を大量に摂取しているにもかかわらず、心臓病の死亡率が低い」という説を打ち出し、彼らが日常的に飲んでいる赤ワインに着目しました。
赤、白、ロゼなどワインの中でも特に赤ワインには「ポリフェノール」という抗酸化物質が豊富に含まれるため、これにより動脈硬化や脳梗塞を防ぐ抗酸化作用、ホルモン促進作用が向上すると発表しました。
人間の身体は、動物性脂肪の多い食事をした後は、血液中の脂肪分が多い状態になります。
一時的であれば問題ありませんが、長期間に渡ってこの状態にあると脂肪分が血管に溜まって詰まり、血流が悪くなります。その結果、動脈硬化、脳梗塞、心疾患を引き起こしやすくなります。
しかし赤ワインを飲みポリフェノールを日常的に摂取することで、活性化酸素の生成を抑えさまざまな病気を防ぐことができるというのが、科学者レヌーの理論です。
この理論がWHOなどによって「フレンチパラドックス」と呼ばれ、1990年代初頭、世界的に広まりました。そして日本においても、赤ワインブーム、健康ブームを巻き起こすきっかけとなったのです。
これがフレンチパラドックスを説明する一つの説。
NHKスペシャル「あなたの寿命は延ばせる~発見!長寿遺伝子~」で紹介された話題の成分「レスベラトロール」はブドウの果皮、茎、弦や赤ワインにも含まれる成分です。
寿命に関わるサーチュイン遺伝子に関係するこの成分。赤ワインを多く飲むフランスの地方で、動脈硬化などの心臓疾患が少ないことから「フレンチパラドックス」とさえ言われ、注目を集め有効性が明らかになりつつあります。
ですがフランスで心臓病が少ないのは野菜や果物の消費が多いなどの理由も考えられ、赤ワインだけでなく複合的な要因があるとも考えられています。
「健康に良い」と、一つの食品ばかりを摂り過ぎないようにしましょう。