ノエビアグループの常盤薬品工業は、長崎県立大大学院・人間健康科学研究科(田中 一成/たなか かずなり教授)との共同研究を行っている。これまでの研究において、牡蠣酵素分解ペプチド(Oyster Extract Peptide:以下OEP)が、急性肝障害や慢性肝障害に対して抑制効果があることを、ラットの血清および肝臓を用いて解明してきた。そして今回、OEPの“高脂肪食ラット”の脂質代謝へ及ぼす影響について研究した。その結果、OEPは血清中および肝臓中のトリアシルグリセロール濃度を低下させることが分かった。
牡蠣酵素分解ペプチド(Oyster Extract Peptide:OEP)の酵素とは主に腸内で食べ物を消化・分解してくれる大切な物質の事。今回開発した牡蠣ペプチド素材は、生牡蠣に含まれていますタンパク質(高分子)を酵素によって低分子分解した吸収に優れた牡蠣ペプチド素材となる。
急性肝障害として、急性肝炎はウイルスに感染してから数週間から数ヵ月後、または、薬剤を初めて投与されてから数週間後に発症する。一般的な症状としては、全身倦怠感、食欲不振、黄疸など。
慢性肝障害として、慢性肝炎は急性肝炎が治りきらずに、肝細胞の破壊と修復が6ヵ月以上にわたって絶え間なく続いている状態をいう。肝臓病の中で一番多いのがこの慢性肝炎で、一部は肝硬変へ進むことがある。
採血した血液は数分後に凝固し、全体が真っ赤な寒天状となります。これを数時間以上放置すると、凝固塊はしだいに強く収縮して小さな塊になり、その周囲に透明な黄色の液が出てきます。これが血清だ。
トリアシルグリセロールは、中性脂肪(トリグリセリド)のこと。コレステロールと同様に食事から取り入れられるものだけでなく、肝臓でもつくられており、その大部分は筋肉や心臓でのエネルギー源として利用されている。余った部分は皮下脂肪のかたちで貯えられるため、いわゆる脂肪太り(肥満)の原因となる。
まず、生牡蠣(広島産)を2種類の酵素分解法によって得られた試料である“濃縮乾燥物”(OEP Type A、B)を用いました。また、このうち、OEP Type Bでは、商品化するためのデキストリン処理(以下、DR)を施したもの(OEP Type B-1)も使用した。動物はSD系雄ラットを1群7~8匹とし、4群に分け、(1)高脂肪食摂取群(コントロール)、(2)高脂肪食摂取+OEP Type A添加群、(3)高脂肪食摂取+OEP Type B添加群、(4)高脂肪食摂取+OEP Type B-1添加群とし 、4週間自由摂食させました。(2)、(3)、(4)には、それぞれ15%の高脂肪食に各OEPを5%のタンパク質レベルで添加した飼料を調製した。そして、試験最終日に、血清中および肝臓中のトリアシルグリセロール濃度を測定することで、OEPの体内での脂質代謝に及ぼす影響について検討した。
デキストリン(DR)とは、トウモロコシのデンプンを原料として加熱処理することで得られた消化されにくいデンプン分解物を、精製した水溶性食物繊維のこと。
OEP Type A、B、B-1とは、生牡蠣を酵素の異なる種類で酵素分解して得られた試料(濃縮乾燥物)。OEP Type Aが従来の酵素分解牡蠣エキス、OEP Type Bが低分子化が進んだ牡蠣ペプチド試料、OEP Type B-1がType B同様の試料にデキストリン処理した試料となる。
各OEP Type A、B摂取後の血清中および肝臓中トリアシルグリセロール濃度の測定結果から、高脂肪食を摂取したラット((1))では測定項目で上昇した血清中および肝臓中のトリアシルグリセロール濃度が、OEP Type A、B添加群((2)、(3)、(4))では抑制する傾向を示した。特に、血清中トリアシルグリセロール濃度は、OEP Type B添加群((3))で高い抑制効果を示し、DRで処理されたOEP Type B-1添加群((4))についても同様の傾向が見られた。これら試験結果から、OEP摂取による作用程度は、低分子化が進んだOEP Type Bが血清中の中性脂肪であるトリアシルグリセロール濃度を強く低下させることがわかった。従って、牡蠣酵素分解ペプチド(OEP)は、中性脂肪低減効果を有する原料として利用可能であることを見出した。