衣服を着用した時に体に加わる圧力(衣服圧)を意図的に高めるように設計された衣服として、補正下着、パンティーストッキングやソックス、スポーツ用のタイツなどが挙げられる。近年、衣服圧を利用し、「脚スッキリ」や「筋肉のサポートを高め、疲労感を軽減」等、脚の引き締めや運動効率の向上などの効果をうたった下半身用の衣類(以降、「加圧を利用したスパッツ」とする。)が市場で多く見受けられるようになった。
医療の現場では、静脈血やリンパ液を心臓方向へと流れやすくする工夫(注1)として衣服圧を利用した弾性ストッキング(詳細は後述)が使われているが、痛み等の異常を認識できないおそれのある糖尿病患者へ使用しないことや、使い方によって「血行障害」、「神経障害」を起こすことがある等の注意表示がされている。
PIO-NET(全国消費生活情報ネットワーク・システム)には加圧を利用した衣服に関する相談が2005 年度以降2011 年1月末日までに102 件寄せられている。
このうち98 件は2008 年度以降に寄せられたものである。総相談件数102 件のうち50 件は脚を加圧するスパッツに関する相談であり、相談者の年齢は40~60 歳代が多かった。
この中で「商品を履いて一日中草むしりをしたところ、腓ひ骨こつ神経麻痺まひとなった」、「ウエストが赤く腫れ痛みが出た」、「足がつったり吐き気がした」等の危害に関するものは10 件あった。また、通信販売等で商品を購入した相談が多く、「サイズが合わなかった」、「きつくて苦しい」、などサイズや加圧の程度が分からずに購入したためと思われる苦情も26 件あった。
そこで、通信販売で消費者が購入できる、「加圧を利用したスパッツ」について、着用した際に体の各部にどの程度の衣服圧が加わるのか測定すると共に、姿勢による衣服圧の変化、注意表示などの調査を行い、「加圧を利用したスパッツ」の使い方について消費者に情報を提供する。